秋田中央の活躍に大きな期待を
「ルールブックの盲点」すら制した秋田中央
本日(2019年7月29日)、履正社(大阪)や明石商(兵庫)などが甲子園出場を決め、いよいよ舞台が近付いてきたなという今日この頃、、。
秋田県民として、何としても秋田中央には頑張ってほしい、優勝してほしいという願いも込め、応援の意味で今日は記事を書こうと思いました。
しかし、今振り返れば、あの強さの源は何だったのだろう?
そこに思いを巡らせた時、ある一つの結論にたどり着きました。
それはやはり、佐藤監督が選手たちに求めた”主体性”にあったのではないかと、、。
7月7日付の秋田魁新報の記事にこうあります。
「何も考えないで頭を丸めるのはやめないか」。
佐藤監督の言葉です。
この言葉を契機として、秋田中央高校野球部は頭髪の自由化に踏み切りました。
この時点から、選手たちに主体性が生まれ、自ら考えてプレーする下地ができていったのではないかと、、。その良い例を、決勝戦の対明桜戦で見ることができました。
あの延長11回、明桜の攻撃の場面です。
👆の記事でも触れていますが、「ルールブックの盲点」と呼ぶべきあのピンチを無得点に抑えた場面です。
おそらく、あの場面を観ていて、球審の事後説明にイマイチ納得がいっていない人も私だけではないと思いますので、ここでもう一度、細かくあの場面に立ち戻ってみたいと思います。
(※しかしながら、あくまでこれは推測するしかない箇所もありますので、当日に確認できた事実=赤と、私個人の推測=緑というように色分けして記したいと思います。)
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延長11回表、明桜の攻撃。
秋田中央の投手は3番手、信太。
1死満塁で明桜の打席には8番東。
カウント2-2の後、東がバットに当てた打球はフラフラとライト前へ。
おそらく打球が外野の前に落ちると判断したのでしょう、、2塁、3塁走者は迷うことなく駆け出しています。(一瞬、3塁ランナーはボールの行方を見ていたようにも見えますが、結局、ボールは落ちたと判断したのでしょう。)
ただ、”外野手の動きを目の前で唯一確認できる位置にいた”1塁走者だけはハーフウェイで待機した後、ライトがボールをキャッチしたのを見て1塁に帰塁しています。
そして、捕球したライトがボールを投げようとした時にはもう、3塁走者はホームイン。2塁走者も3塁に到達していました。
この、ライトがフライを捕球した時点でツーアウト。
ここまでは誰も疑いないでしょう。
問題となったのは、この後です。
私が後日、この試合を放送動画で確認したところ、実況の方は「フォースアウト」と仰ってましたが、誤りです。正確にはここは『アピールアウト』です。
ここで、「フォースアウト」と「アピールアウト」の違いについて説明を。
(※この先の説明は若干長くなりますので、興味のない方は適当なところまで読み飛ばして下さい。)
「フォースアウト」とは
・・・英語の“Force(フォース)"(強制する、強いる)という意味が示すように、打者が打った際、走者が進塁を強制される状況下において、進塁先の塁でアウトにされること。
例えば、1死1塁の場面でバッターがセカンドゴロを打った際、当然、打ったバッターは1塁を目指して走ってくるので、1塁走者は必然的に2塁を目指して走らなければいけなくなります。(”塁が詰まっている”とも言えるでしょう。)これは1死、1・2塁の場面でも同じです。
この時に、ゴロを処理したセカンドが2塁に投げ、2塁に入った野手がボールをキャッチした時点でフォースアウトになります。(1塁を目指して走るバッターがいるため。)
ところが、、ゴロを処理したセカンドが2塁に投げずに1塁に送球、バッターをフォースアウトにした時点で、1塁走者は2塁にボールが送球されても、フォースアウトにはなりません。これは、バッターがすでにアウトになったことで、”塁が詰まった状態ではなくなった”からです。(これを”フォース状態の解除”とも言うようです。)この場合、極端な言い方をすれば、1塁走者は2塁を目指そうが、1塁に戻ろうが、ボールを持った野手にタッチされなければ、アウトにはなりません。
これは、1死2塁の場合でも同じです。
同じくセカンドゴロを打った場合、2塁走者は野手(セカンド)の動きを見て、3塁に進むか、2塁にとどまるかは自由です。(塁が詰まってない、フォースの状態ではないためです。)
「アピールアウト」とは
・・・ランナーが規則に反した行為をした場合に、野手が審判にそのことをアピールし、審判に認められればアウトを成立させるもの、です。
具体的には、外野フライが上がったのを見て、ランナーがリタッチ動作(外野手が捕球するまでランナーは走り出してはならない)をせずに進塁した場合、守備側はその行為を正規な走塁ではないというアピールをし、リタッチしていない塁に送球するか、ランナーにボールタッチすることで審判にアピール(ボールを保持したグラブを掲げるなど)します。このアピール行為を審判が認めてアウトの宣告をすれば、「アピールアウト」になります。
※ここで問題となるのは、スリーアウトが成立するより前に、3塁走者がホームインしている場合です。
もしも、スリーアウト目が「フォースアウト」の場合、3塁走者が先にホームインしていたとしても、得点は認められません。しかし、スリーアウト目が「アピールアウト」の場合、そのアピールアウトが認められるより前に3塁走者がホームインしていれば、得点は認められます。
少し複雑な説明だったかもしれませんが、、ご理解いただけたでしょうか?
(※実はこの時点で気付いたのですが、、今回のこの事例が『ウィキペディア(Wikipedia)』にすでに掲載されてました。(笑)興味のある方は「第4アウト」で検索してみて下さい。”事例3:2019年、明桜高校 対 秋田中央高校”という項目で掲載されています。)
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少々説明が長くなってしまいましたが、以上のことを踏まえて再度、明桜vs秋田中央の試合に戻ります。
ライトがフライを捕球した時点でツーアウト。
この時点で、明桜の3塁走者はすでにホームインしていました。
ライトからの送球は一度、投手の信太に渡り、信太がさらに2塁に送球してアピール。ここで審判に「アピールアウト」が認められ、スリーアウト。
ただし、上記で説明しましたように、「アピールアウト」の場合は、3塁ランナーがアピールアウト成立より前にホームインしていれば得点が認められます。
明桜のキャプテン加藤はこのことを攻撃終了後、球審に訴えていたのでしょう。ホームインが早かったのではないかと、、。
しかし、秋田中央ベンチはこのことにいち早く気づき、3塁に送球してアピールアウトを重ねる様、指示を出していました。それに気づいた投手の信太も3塁にボールを送れと、手で合図を出していました。
こうして、ボールはさらに3塁にも送球され、秋田中央の選手がアピールすることで、「4つ目のアウト」が成立。(=ホームインした3塁走者のアピールアウトが成立し、明桜の得点はならず。)
球審がマイク放送で皆さんに「第3アウト置き換えにより、、」と説明していたのは、このことです。
ライトがフライを捕球 ➡ 2アウト
2塁に送球してアピールアウト ➡ 第3アウト
さらに3塁に送球してアピールアウト ➡ 第4アウト
本来、3アウト成立時点で攻守交代となりますから、「第4アウト」なんて言われても違和感が生じますが、、3アウトが成立した後も、アピール行為は認められていて、この第4アウトが記録上、第3アウトに上書きされる、ということのようです。(この流れを俗に「第3アウトの置き換え」と言っているようです。)
今年こそ、「白河の関越え」を!
この、俗に「ルールブックの盲点」と言われる状況に素早く気づき、的確に指示を出した秋田中央ベンチ、そしてその行為をこれまた素早く実行に移すことができた中央の野手陣。
これこそ、主体性が培われていたことの表れではないでしょうか。
一度、ライトから投手の信太に返球されたボールをセカンドにいた選手が要求していました。そしてさらに、ベンチの指示で今度は信太が3塁に送球するよう合図を出す。もしかすると、それ以外の選手たちも互いに指示を出し合っていたかもしれません。
あの場面でもし、3塁にボールを送球せずに(第4アウトのアピールをせずに)投手及び内野手がフェアグラウンドの外に出ていたら、その時点でアピールアウトは認められませんでした。ルール上、そうなっているようです。その場合、明桜の得点が認められ、その時点で5-4。試合はどうなっていたか、分かりません。
(※事実、第4アウト成立後、球審はホームベース前で、両手で大きくバツを描く動作をしています。あれは、一度認めた明桜のホームイン(得点)を再度、不成立にしたということなのでしょう。)
こういった意味では、秋田中央の”頭脳戦の勝利”とも言えそうです。
こういった総合力が、秋田中央を優勝にまで導いた力ではなかったかと、今になって振り返っています。エース松平を中心とした安定した投手陣、準々決勝、準決勝とコールド勝ちをしてみせた強力打線、そしてそれらの底力を支える選手の主体性。
これが秋田中央優勝の原動力だ!、、と結論付けることにしました。
この総合力を武器に、(勝手なことばかり言ってますが、、)秋田中央には是非!
”白河の関越え”を果たし、深紅の大優勝旗を東北の地へ、秋田へ持ってきて頂きたいと思います。
昨夏、金足農業があと一歩というところで逃したその偉業を、是非とも!
秋田県民の皆さん、秋田中央の活躍に期待し、応援しましょう。