20年ぶりに再会を果たした高校球児たち -さきがけ八橋球場-

2020年4月1日

両監督の始球式で幕を開けた「決勝再現試合」

2019年10月22日(火)。

うっすら肌寒くなってきた秋田市内。

前日に入手した情報により、やって参りました、さきがけ八橋球場。

20年の時を経て実現されました今日の試合、、

【第81回高校野球秋田大会決勝再現試合】秋田 vs 鷹巣

そもそもこの試合が行われることになった経緯は、、

20年前の1999年(平成11年)、八橋球場での高校野球秋田大会決勝戦、

秋田 3-1 鷹巣

の試合後、秋田の小野監督が鷹巣の野中監督に20年後の再試合を呼びかけ、野中監督が承諾したことにより、実施される運びになったようです。

また、本日、球場で頂きましたパンフレットより、詳細な経緯を一部引用させて頂きます。

これを読むことで、当時の試合に至るまでの監督の苦労や感慨、再現試合の実現を果たすまでの関係者の方々の思いが伝わってくるようでした。

 

ーーーーー(一部引用ここから)ーーーーー

小野巧監督(秋田高校)の思い

・高校野球監督のスタートは、鷹巣高校(1980.4~1985.3の5年間)であった。

・就任当時、グランドなく野球用具をリヤカーに積み練習場所を探し求める日々だった。地元では、「ジプシー・リヤカー野球部」と言われていた。

・創部当初を振り返り、「あのチームが良く決勝まで勝ち進んできた」と感激だった。試合内容もよく、鷹巣のスタンドには教え子が多くおり、当時のことが鮮明に思い出された。

 

野中仁史監督(鷹巣高校)の思い

・監督就任5年目の勝負の年。北秋田地域の力のある生徒たちが、地元から甲子園を目指そうと集まってきてくれていた。(平成8年夏の秋田大会準々決勝秋田商業戦。9回表を終え5対1でリード。裏に大逆転負け。その試合を見ていた中学生たち)

・春の県大会4強。初のシード権を獲得し、6月以降はほとんど負けなしで自信を深めていた。

 

伊東裕選手の思い(秋田高校:再現試合実行委員会代表)

・「チーム全員が想いを一つにし、お互いにカバーし合えるチームになれば、想いは成就する」

4月に左目を負傷し、2ヶ月間入院。その間、仲間が伊東を甲子園に!と、レギュラー、イレギュラー関係なく、まとまりのあるチームになり優勝。

・当時鷹巣高校のエース成田は、社会人としても秋田わか杉国体(平成19年)で活躍した。決勝戦を機に鷹巣高校のメンバーとは、当時からつながりを持つようになり、現在では仕事上関わりを持つ者もいる。その全ての始まりが第81回大会決勝戦であり、再現試合を通じて、その絆をさらに深めたい。

・当時、秋田高校の主将は伊東裕であり、現在母校の監督である。秋田高校の硬式野球部に憧れて、甲子園でプレーすることが夢であった。秋田高校の野球部が自分の原点であり、怪我をしてしまったことも含め、高校時代の様々な経験を活かし、後輩たちの夢や目標を叶えるための手助けをしたい。

ーーーーー(一部引用ここまで)ーーーーー

 

 

私自身、高校生の現役当時、小野監督が野球部を率いていたこともあり、非常に懐かしく感じました。

小野巧元監督、すっかりお年をとられた姿を拝見しましたが、声は当時のままであり、私も高校時代に戻ったような感覚になりました。

(鷹巣高校は、現在の秋田北鷹高校です。)

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試合開始に先立ち、両監督の始球式が行われました。

(※ちなみに、本日の試合は軟式球で実施されました。)

両監督がマウンドから同時に投げるという始球式。

手前が小野監督です。

今日の試合は終始、選手に対する冷やかし半分のヤジが飛び交うなど、球場全体が常に笑いに包まれていました。こういう試合を観るのも非常にいいと感じたものです。

 

序盤、まず秋田が先制

40歳手前の選手たち。

内野ゴロを処理するにも、ワンバウンド送球や暴投などが比較的目立ちました、今日の試合。

そんな中にも、笑いあり、歓声ありで、選手たちは皆、楽しんでプレーする姿を見せてくれました。

2回表、まず秋田の高橋が三遊間を破るヒットを放ち、先制します。

秋田 1-0 鷹巣

球場内には歓声に交じり、父兄たちの笑い声も響いていました。

その笑い声すらおかしく思えてしまうような、、いい雰囲気が流れていたと思います。

20年ぶりの再会を果たした球児たち。

終始、微笑ましく観ることができました。

 

鷹巣、5回に髙橋のタイムリーなどで逆転

5回裏、鷹巣は5番髙橋が右中間にタイムリースリーベースヒットを放つなど、連打で逆転。

秋田 1-2 鷹巣

この回、秋田は同点に追いつかれた時点で、マウンド上に内野陣が集まりました。

八橋のマウンドに集合するのも20年ぶりなのでしょう。

秋田は2番手投手として、伊東現監督がマウンドへ。

空振り三振を奪う好投で、球場の父兄たちが一気に沸き上がりました。

 

途中、ファウルボールに果敢にヘッドスライディングで飛び込む三塁手。

それと示し合わせていたかのように、ほぼ同時にスライディングでズッコケる三塁球審。

偶然過ぎる見事なシンクロ、ミラクルに、またも球場が盛り上がりました。

 

秋田、逆転で再びリード

6回表、秋田は連打でこの回に一挙3点、再び2点のリードを奪います。

秋田 4-2 鷹巣

 

やはり年齢を重ねても、元高校球児。

単打に長打に、肝心なところはきっちり見せてくれます。

 

鷹巣、8回にランニングHR

2点を追いかける鷹巣は8回裏、センター前ヒット!

この打球を秋田のセンターが後逸してしまい、この間に打ったランナーは3塁まで。

しかし、周りの「走れ、走れ!」の声に押され、ついにホームに帰還します。

鷹巣、ランニングホームランで1点追加。1点差とします。

秋田 4-3 鷹巣

 

鷹巣、サヨナラのチャンスを生むも、あと一歩及ばず

4-3のまま、9回裏。

鷹巣は1死満塁とサヨナラのチャンスまで作りますが、後続が倒れ、試合終了。

秋田 4-3 鷹巣

 

『20年越しのリベンジなるか?』というところでしたが、、あと一歩及ばず。

しかし、大いに楽しませてもらいました。

何より、20年ぶりに再び八橋の地で対戦した両チームの選手たちが最も楽しんでいたと思います。

まるで同窓会を見ているような、、。

試合後には両チームの監督や選手、当時のマネージャーや父兄たちも交じっての記念撮影。

野球という競技を通して、当時の思い出を蘇らせているのだろうなと思うと、非常にうらやましい気持ちになりました。

選手たち自身が楽しくプレーし、見ている側も楽しくなるような今日の試合。

20年前の当時、再試合を約束したこともそうですが、それを実現させた秋田の現伊東監督、その他の選手たち。頭が下がる思いです。

両校の元監督、元高校球児たちの皆さん、お疲れさまでした。

普段観戦する高校野球とは、また違った感動を頂きました。

特に、当時の両監督の思い、伊東現監督の思いや元球児たちのつながりを考えるにつけ、素晴らしい場面、試合に立ち会うことができて非常に良かったと思います。

ますます野球が好きになりました。

今日の試合をずっと、忘れずにいたいと思います。

また一つ、「球児たちのあしあと」をたどることができました。