あの夏を振り返る⚾️ 角館 vs 大曲工業
記憶から消えることのない試合
こんにちは、REIYAです。
高校野球観戦が好きな方にとっては、どうしても忘れられない試合が一つや二つはあると思います。
まして、その当事者となった高校球児たちにとっては、、。
これは個人的な考えですが、場合によっては勝利した試合よりも敗れた試合の方がより記憶に残っている、ということはないでしょうか。
本人にとっては苦い記憶の一つとなっている可能性もあるので、その点は申し訳ないとは思いますが、それでも記事にしておきたい試合があります。
たとえ敗れたとしても、彼の奮闘する姿は今でも私の脳裏に焼き付いているからです。
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2016年7月25日。
こまちスタジアムにて行われました、夏の全国高校野球秋田県大会決勝。
角館 vs 大曲工業
マウンド上で肩慣らしをする角館のエース、小木田。
準々決勝の能代松陽戦では無安打無得点に抑えた快投ぶりを見せ、俄然、注目を集めていました。
県南勢同士の対決。
1回裏、大曲工業打線がさっそく小木田を捉えます。
1死2塁で3番守沢。
右中間に落ちるヒットで先制!
角館 0-1 大曲工業
同じ県南勢として、小木田の手の内を見透かし、甘い球は見逃さない大曲工業。
序盤から中盤まで連打を浴びせる角館
対する角館は2回表、早くも連打で逆転。
角館 2-1 大曲工業
この時大曲工業、マウンド上には2番手投手、当時2年生、後に広島にドラフト育成枠で入る藤井黎萊(ふじいれいら)。
2回裏、小木田は140キロ台の速球に得意のスライダーを絡めて三者凡退に。
彼らしい、落ち着いた堂々たるピッチング。
4回表、角館は小木田の力投に応えるかのように、キャプテン赤上のタイムリーで追加点。
角館 3-1 大曲工業
さらに5回、角館打線は藤井を打ち崩しにかかります。
ノーアウト1,3塁で5番佐々木。
右中間を割るタイムリースリーベースで2点追加!
角館 5-1 大曲工業
藤井に息つく暇を与えず、さらに6番柴田がスクイズ!
角館 6-1 大曲工業
「オイサー!♪ オイサー!♪」
角館の応援スタンドでは独特の「タイガーラグ」がさらにヒートアップ!
藤井はこの後、後続を抑えますが、この回手痛い4失点。
小木田が右足に打球を受け、、
6回裏、大曲工業の攻撃。
1番高橋航平。
ピッチャー返しの打球は小木田の右足ふくらはぎに直撃!
この打球は内野安打となり、高橋は出塁。
右足を引きずり、歯を食いしばるように痛みをこらえる小木田。
アイシング処置をしてもらい、再び投球に戻る小木田でしたが、、
何と言っても投球時に自らの体重を支える軸となる右足。
この後、、大曲工業打線が小木田のスライダーを捉え始めます、、。
大曲工業は2番、丹波が打席へ。
これまでの試合の流れを変えるかのように、大曲工業の「大工ファイヤー」の応援歌がこまちスタジアムに響き渡ります。
小木田の高めのスライダーを捉えた丹波の打球はセンター前に!
ノーアウト1,2塁。
右足への被打球が影響したのか、小木田は制球を乱し、3番・守沢にフォアボール。
ノーアウト満塁に。
5点差を追う大曲工業にとっては、願ってもないチャンス!
4番、佐藤が打席へ。
フルカウントの後、内角球を打ち上げた打球はライトへのタイムリー!!
大曲工業、2者生還!
角館 6-3 大曲工業
大曲工業はなおもノーアウト1,2塁で5番、佐渡。
歩き方にやや不自然さもうかがえる小木田。
やはり被打球の影響がまだ残るのでしょう。
佐渡は手堅く送りバントを決め、1死2,3塁に。
6番、浅利はピッチャーゴロ。
3-本間で3塁ランナーを挟殺しますが、この間にバッターランナーは2塁まで。
2死2,3塁。
7番、髙橋陽。
小木田、得意のスライダーでピッチャーゴロに抑え、スリーアウト。
何とか失点を2に抑え、ベンチに戻ります。
少し笑顔も見え、走る姿もさほど痛みを感じさせないまでに。
角館 6-3 大曲工業
自らのバットで追加点を奪う小木田
8回表、角館は1番、キャプテンの赤上が打席へ。
大曲工業、マウンド上にはエースの鈴木。
赤上をセカンドゴロに抑え、1死。
2番高橋。
空振り三振するも、振り逃げで出塁。
1死1塁。
「タイガーラグ」で打者を盛り上げる角館応援スタンド。
3番小松はきっちり送りバントを決め、2死2塁。
チャンスで4番小木田が打席へ。
センター前へのタイムリーヒットでランナー生還!
角館 7-3 大曲工業
「取られたら取り返す」と言わんばかりの小木田のヒット。
投打に活躍を見せてくれます。
終盤で再び4点差とした角館。
大曲工業を引き離しにかかります。
しかし、大曲工業のエース鈴木も打たれてばかりではありません。
5番佐々木をセカンドゴロに抑え、スリーアウト。
試合をひっくり返す大曲工業の”集中打”
8回裏、4点差を追いかける大曲工業。
2番、丹波から。
バウンドの高いショートゴロが内野安打となり、丹波が出塁!
(写真はイメージ画です。)
大曲工業、反撃の糸口をつかみます。
そして3番守沢のセンター前ヒットで丹波は3塁へ!
ノーアウト1,3塁とチャンス拡大します。
小木田のスライダーを捉え始めた感のある大曲工業打線。
4番、佐藤。
外角球に食らいつき、サードへの内野安打へ。
ノーアウト満塁とします。
5番、佐渡。
セカンドゴロで1塁ランナーは2塁フォースアウト。
この間に3塁ランナー生還で大曲工業、1点奪取。
角館 7-4 大曲工業
なおも1死1,3塁。
小木田のスライダーに食らいついていく大曲工業打線。
じわじわと点差を詰めていきます。
6番、浅利。
何とか後続を断ちたい小木田でしたが、、
甘く入ったストレートを浅利がとらえます。
高い金属音がこまちスタジアムに響き、打球はレフト前へ!!
3塁ランナー生還し、2点差!
角館 7-5 大曲工業
再び1死1,3塁で7番、キャプテンの髙橋陽。
完全に流れを引き戻したかのような雰囲気で「大工ファイヤー」が。
1塁ランナーが盗塁を決め、1死2,3塁に。
そして外に逃げるスライダーを髙橋がセンター前に!
さらにランナー生還で1点差。
角館 7-6 大曲工業
体を崩しながらも小木田のスライダーを捉えて逃がさない大曲工業。
またしても、1死1,3塁。
小木田としては苦しいところ。
打席には8番加藤。
1塁ランナーがまたも盗塁を決め、1死2,3塁。
一打逆転のチャンスにまでこぎつけた大曲工業。
加藤はバウンドの高いピッチャーゴロ。
小木田が難なくさばき、ホームでタッチアウト、かと思いきやボールはキャッチャーミットからこぼれ、後方へ。この間に2塁ランナーもホームに生還し、逆転!!
角館 7-8 大曲工業
一段と沸き上がる大曲工業ベンチ、そして応援スタンド。
試合をひっくり返した大曲工業の”集中打”。
がっくりとした表情を浮かべ、マウンドに戻る小木田。
試合の明暗が分かれた8回となりました、、。
しかし後続を小木田が抑え、いよいよ最終回の攻撃へ。
今なお輝きを放つピッチャー
9回表、角館は6番髙橋から。
フォアボールで出塁、まずは同点のランナーを出します。
しかし7番田口、送りバントを試みるもフライに打ち上げてしまい、1死1塁。
なかなか流れをつかめない角館打線。
8番鈴木。
大曲工業エース鈴木が空振り三振を奪い、2死1塁。
角館、追い詰められます。
9番佐藤。
しぶとくレフト前に運び、2死1,3塁に。
まだまだ粘りを見せる角館。
チャンスで1番、キャプテンの赤上へ。
「オイサー♪ オイサー♪」
一打同点、長打で逆転の場面に「タイガーラグ」が盛り上がる角館。
鈴木の渾身のストレートにファウルで粘る赤上。
コースギリギリのボールを見送る赤上。
1球1球に球場がどよめくこまちスタジアム。
3ボール2ストライクのフルカウント。
ストレートをとらえた赤上の打球はセンターへ高く上がり、、
センターがキャッチしてスリーアウト。
大曲工業が初の甲子園出場を決めた瞬間でした。
角館 7-8x 大曲工業
がっくりと肩を落とし、涙を流す小木田。
そこに敗者の姿を見ました。
大曲工業の校歌が流れ、ベンチ前でなおも肩を落とし続ける背番号1の姿。
右足に打球を受け、制球を乱したという見方もできますが、スライダーを打たれて逆転を許した8回の投球はよほど悔やまれるものだったと思います。
準決勝まで快投を続け、この日の決勝も中盤まで見事に抑えてきた角館のエース。
「野球は最後の最後まで分からない」とはよく使われる言葉ですが、この日の試合展開は彼にとっては”悪夢”のようなものだったのではないでしょうか。
試合に敗れはしましたが、小木田投手のピッチングは素晴らしいものでした。
もっと見続けたいという思いから、今、記事を書いています。
卒業後はTDKに進み、得意のスライダーに加え、150キロ台のストレートも持つ小木田投手。
今年のドラフトには漏れましたが、あきらめず挑戦を続けてほしいと思います。
2016年のあの夏から、私の中で彼の輝きは衰えていません。
このように、卒業後も心に残り続ける球児はいます。
野球を続ける限り、応援し続けたいと思います。
頑張れ、秋田球児!